2009バーゼルワールドレポート
恒例の時計の祭典2009バーゼルワールドが3月26日から4月2日までスイスバーゼルで開催されました。
3月のバーゼルはまだ寒さが残り連日5度以下という気温でまだ木々の芽吹きがようやく始まったばかりでした。
世界中が不景気真っ只中での今年のフェアでしたが想像していた以上の入場者の減少で例年の熱気は今ひとつ感じられない静かなフェアと言う印象でした。
有名ブランドのブースでも30%以上の注文ダウンと聞いています。
厳しい状況でのフェアだったと言うのが今年の実感です。
さて、そんな中での今年の新作を期待し各ブースを見て回りました。
そして会場で毎日事務局から発行されるDAILY NEWS(英語版)を見渡してみると今年の傾向がなんとなく見えてきます。
といっても今年の傾向を一言で言ってしまえば”昨年の延長”といっていいくらい特に目新しいものが無かったというのが正直なところです。
どうやらこの辺にも不景気の影響が現れているのかもしれませんが昨年見たモデルが展示されているブースが多かったように感じます。
ということで大きな変化は無い年であったというのが私の感想です。
その上であえて私なりに今年の傾向をざっと総括すると以下の点をあげたいと思います。
●オールブラックモデルの増加
HUBULOTのブラック以来ずっとブラックの人気が続いているように思いますが今年は特にオールブラックが目立っていたように思います。
特にスポーツ系のブランドにその傾向を強く感じました。
●ケースの多部品化(複合化)による超立体化
昨年にも多く見られましたがケースの複雑化とそれによるケースの立体化デザインがさらに進んだように感じます。
一つのケースを5部品以上に分割構成することでよりケース横などの立体化を強調したデザインが増えている。
ベゼルと裏ブタを挟んだサンドイッチスタイルからさらに進んでケースとラグを分割してより立体的に見せる工夫がされています。
RICHARD MILLEやセイコーのガランテなどがこのデザインの先駆と思いますがそのデザインの流れを汲んでいるように思います。
INVICTA(USA)や ANANTA(SEIKOの新作)がこの点で印象的でした。
ANANTAは日本刀をイメージしたデザインでケースとラグを一体化し見事な仕上げでシャープ感を出しています。
●透明文字盤の使用
機械式時計のオープンハートや表スケルトンがさらに一歩進んだ形と言えるのか透明文字盤の上にパターン印刷やアプライドインデックスを施しそれを通してムーブメントを透かして見せることでデザイン上の複合効果を出しています。
文字盤の印刷パターンやインデックスの処理など各社のデザインセンスが光ります。
すでにRICHARD MILLE が早かったですが 今回VACHERON, DANIEL ROTHなどにもこのアイデアが見られます。
ガラス裏にパターン印刷を加えているのも同じ手法と言えるでしょう。
● レディスの大型化とゴージャス化
すでに数年前から進んでいると思うのですが今年は私の目にも明らかに大ぶりのレディスモデルが目につきました。
もともとファッション系では大きなモデルは普通にあったと思いますが今回特にスポーツ系をベースにしたエレガンス、ゴージャス系のデザインにも38ミリ以上が多く見られます。
ベルトは圧倒的に白とピンクが主流。
相変わらずダイヤ取り巻きなどケースやダイアルに石をふんだんに使ったゴージャスなモデルが多いです。
その他、変わったところで印象的なモデルを紹介します。
ロボットをイメージした斬新でユニークなデザイン。(スイスURWERK)
オールブラックに鮮やかなレッドインデックス(針)の印象的なモデル
(スイス FRANC
これぞスイス製というハンドメイドの独創的デザイン(スイスBLU)
なんともユニークでオリジナリティにあふれています。
今年のフェアは特にレディスに注目して見て回りましたがあらためて有名ブランドのレディスデザインの美しさと完成度に目を見張るものがあり、たいへん魅せられました。
シャネル、ブランパン,ユリスナルダン、ディオール、ベルサーチなどさすがにじっくりと見るとどれも優れたデザインで見事に美しいです。
写真ではなかなか掴めませんが実物を見ると本当に美しさを実感します。
ヨーロッパの人たちはなんと美的感覚に優れているのでしょうか。
歴史ある文化と芸術を背景に、長い間に培った美的感覚がこうしたデザインをもたらすのだろうとあらためて感心しました。
でも日本人にも繊細で優れた美的感覚はあります。
ケンテックスもこれらのマスターピースに少しでも近づけられる美しいレディスモデルが欲しいなと言うのが素直な感想です。
ケンテックスはこれまでずっとメンズオンリーのイメージできましたがそろそろいいレディスを開発したいという意欲が湧いてきました。
ケンテックスがレディスを造ったらこうなるという、優れた美しいモデルをそう遠くないうちに造りたいと思います。
皆さんが欲しくなるようなデザインにしたいですね。
KENTEXブース
HALL6 ユニバース館もやはり昨年に比べ人出は大きく減りましたがそれでも多くの人がブースを訪れてくれました。
今年のKENTEXの新作発表モデルは三型あります。
一つは今年6月発売予定のコンフィデンス2009です。
日本製自動巻き塔載のモダンクラシックでエレガントなデザインです。
価格は2万円前後でお手頃に入手できる自動巻きモデルです。
二つ目はスカイマン5(仮称)です。
スカイマン4(NAVIGATION)は発売後すでに5年が過ぎていますがその後継モデルとなります。
国産のクオーツのクロノグラフモデルで斬新なデザインです。
スカイマンシリーズとしては初めてブラックパネルつきのベゼルとなります。
黒とブルーのパネルを予定、またリュウズにはレバー式のリュウズガードがつきケース9時側には立体的なパターンが入り最新のトレンドも押さえています。
そして三つ目はいよいよクラフツマン7750のお目見えです。
まだ当初のモックアップレベルですが初にしてすでに風格があります。
2007年にETA2824塔載のクラフツマンを発売直後わずか1ヶ月で完売してしまった記憶が新しいですが今回その上位バージョンとしてバルジュー7750塔載でのフラッグシップモデルとなります。
もちろん機能は当初のクラフツマンをさらに上回るレベルにしたいと考えています。
オールチタンのほか超耐磁構造、耐衝撃構造そしてトリチウム管発光による完璧な視認性とすべて網羅した超実用時計のコンセプトはそのままです。
これは正真正銘のフラッグシップモデルとなるでしょう。
以上の三シリーズが今回のバーゼルでの発表モデルです。
詳細はおってお伝えいたしますのでチェックしてください。
さて最後になりますが、今年もたくさんの優れた時計を見てきました。
不景気のせいか今年は全体に盛り上がりに欠ける雰囲気がありましたが来年には景気も回復し再び活気が戻るものと思います。
たくさんいいデザインがあり過ぎてひとつひとつじっくり見られないのが残念ですが、各ブランドが本当にアイデアを振り絞った優れた作品というべき時計の数々がありました。
それぞれが強烈な個性を主張しています。
斬新でユニークなものがたくさんあります。
人のアイデアと言うのは本当に無限ですね。
今年もこれらの優れた作品を見て次のモデル開発のエネルギーをもらいました。
来年もまたすばらしい時計に出会えることを期待してこのレポートを終わります