新クラフツマン 展示イベントをやります。

これまで盛りだくさんの記事で紹介してきました新クラフツマンですが、近く東京銀座で展示イベントを行います。

NE88搭載の25周年記念限定1モデルと9015搭載の2モデルを中心に現行のKENTEXモデルも同時に展示します。

時計はやはり手に取って触れてみてその質感や味わいが分かるものでなかなか写真や説明だけではその良さは伝わってきません。

ぜひこの機会にこのクラフツマンを手に取り腕に付けてみていたただきたいと思っています。

シャープなインデックスとカーボンの複合された立体的なダイアル、雉のデザインされた彫りプレートのバックスケルトン、その風格とは裏腹に腕に付けた時のチタンの意外な軽さ、プラチナめっきの美しさ、きっと我々のこだわりが伝わってくると思います。

特に25周年モデルはこの先あまり店頭でも見る機会はなかなかないでしょう。

貴重なイベントになります。
ぜひ足を運んでいただきたいです。

私も期間中は時計の説明にスタンバイしていますのでぜひ皆さん来てください。

これまでなかなかお会いできる機会がありませんでしたができるだけケンテックスの愛用者の方々ともお会いし時計談義ができることを楽しみにしています。

ぜひお待ちしてます。




場所は銀座ギャラリー アルド(最寄駅は地下鉄日比谷線、都営浅草線の東銀座駅 A1出口)

銀座6−13−8 共同銀座ビル1F

会期は12月11日(木)から14日(日)までです。
11日は13;00から20;00まで
12日から14日までは11;00から20;00まで

詳細は
http://www.kentex-jp.com/news/1036/

クラフツマン25周年モデル その2

クラフトウォッチ(Crafts Watches)

これはS526X新クラフツマンを一言で言い表すのにふさわしい言葉ではないかと思っています。

近く発売するこのモデルはケンテックスが2014年に設定した新しいコンセプト
”Time Crafted To Perfection”
を具現化する最初のモデルになります。

技術とデザインの力を総結集した最高の時計を目指す。
そこに作り手のこだわりを妥協なく入れることで素晴らしい時計を作ることができると確信します。

どこにでもあるような時計でなく、スイスの高級時計にも劣らない時計を日本人のプロデュースで行うことに意義があります。

もちろん一個何千万もするような独立時計師の世界とは較べられませんが実用時計としてメーカーが作る時計の中では極めてコストパフォーマンスの高い優れた高品質時計を世の中に提供することは時計メーカーの一つとしての私たちの理念です。

その意志を具現化するのはKENTEXの中ではやはりクラフツマンシリーズ(Craftsman Series)が相応しいというのが社内での熱い議論を経た結論でした。

それを分かりやすく一言で表す言葉がΓクラフトウォッチ(Crafts Watches)」かと思うのです。


前報でムーブメントについて紹介しましたので今回から外装の説明に入ります。

このへんで今生産に入っているモデルの顔を軽く紹介いたします。



まずこの時計の最大の特徴は超耐磁時計(Anti Magnetic)です。

それは一般の耐磁時計とはレベルの違う本格耐磁性能を持ったものです。
軟鉄インナーケース(Soft Iron)を採用した特殊構造でその耐磁性能はJIS二種規格の16000A/mをはるかに超える40000A/m以上の実力を備えています。
現在日本の信頼できる機関と共同で耐磁性能試験を実施していますのでその詳細をいずれ発表できると思います。

現代の生活においてはITの進化によってパソコンや携帯などより強い磁場に遭遇する機会が多い生活環境になってきているといえます。
機械式時計は金属精密部品の集合体で磁場の影響を受けやすい精密機械です。
強い磁場に5センチ以内に近づくと機械式時計は磁気帯びの危険があります。
いったん帯磁してしまうとどんなに高性能なムーブであっても精度を維持できなくなります。
そこでどんな環境下にも耐えられる耐磁性能を担保しておくことは高級時計には重要で大切な要素であると考えます。
近未来に始まるリニアモーターカーなど強い磁場環境に遭遇するチャンスがあっても安心して時計を装着することができます。



次にトリチウム管発光システム(Tritium Ilumination System)を採用した抜群の視認性です。

トリチウム管を文字板12本と針3本(時分針と小秒針)の計15本採用します。

トリチウム発光は普通の暗がりではたいした効果を感じないのですがたとえば少し長い時間、かなり暗い所にいるとその驚く効果を実感できます。
身近なところでは映画館に入り一時間ほど経過すると蓄光(夜光)はかなり輝度が落ちているのに対しトリチウム管はかなり明るく輝き容易に時刻を読むことができます。
強化夜光レベルとは比べ物になりません。

同じことが真夜中に目覚めたとき、夜道や暗いタクシーの中などでその効果を実感できます。仮に真っ暗な洞窟の中に何日もいた場合でもトリチウムは20年間エネルギーなしで光り続ける自己発光の性質を持っているので少なくとも時間の経過は知ることができます。(12年が半減期です)
実際にこの時計を携帯すると実生活で役立つことがとても実感できます。

この二つの性能機能レベルを併せ持つ時計は私の知るところでは世の中にほとんどないと思います。
この時点でもすでに貴重といえるのではないでしょうか。


RolexのミルガウスIWCのインジュニアにはトリチウム発光システムはありません。
またLuminoxやBALLのトリチウム発光時計にはこのレベルの耐磁性能を持つ時計はありません。
非常に実用性の高い時計であるといえるでしょう。





三つめはチタン(Titanium)材の採用です。

正確にいえばチタンのほかにセラミック(Ceramic Bezel)、軟鉄(Soft Iron Inner case)、カーボン(Carbon Dial)、Bs(文字板)、316Lステンレス、サファイアを使用した複合素材時計(Fusion)と言えます。

ケース本体とバンドに軽くて強度のあるチタンを採用しています。

チタンは携帯していてとても軽く使いやすい素材です。
冬の朝など一般のメタル時計が冷たくなっているときでもチタン製時計は心地よく、違和感なくつけられます。
耐食性が高くまたアレルギー反応が弱いのでかぶれることはほとんどありません。
時計としてとても魅力のある素材ですがステンレス素材に比べて製造が困難でチタン加工のできるメーカーは限られます。
材料費も近年ではかなり高騰しています。

結果としてチタンケース、バンド採用はかなりコストの高いものになります。

ステンレスにしてコストを抑え販売価格を下げるか、またはあくまでチタンで理想の時計を追求するか。
ケンテックスはここでチタン採用にこだわりました。

ケンテックスの理念である

最高の時計を目指す。
どこにもないものを造る。

を具現化するためです。

もちろん快適、携帯性、耐久性(径時品質)という時計本来の実用性にこだわった上での結論です。

ただしチタンは残念ながら柔らかく傷がつきやすいという欠点があります。

それを補うために前作S526X-1&2)同様 ケース、バンドのチタン表面にIPHめっき処理を施します(9015モデル)。
ビッカース硬度2000(Hv2000)程度の超硬質めっきコーティングによってチタン素材そのままとは比べ物にならないくらい耐擦傷性が高くなり小傷がつきにくくなります。
結果2,3年の使用でもほとんど傷が目立たないレベルになります。
今回のIPHは前作とは違い明るいIPH色を採用し、より魅力的で高級感のある外観になっています。


またNE88搭載モデルはさらに高級仕様としてプラチナPVDめっき(PlatinumPVD)を表面に施します。
プラチナPVDは一般の時計ケースにはほとんど使われないものですが今回の25周年記念モデルとして特別に採用しています。
その結果チタンの色気のないグレイな色ではなくジュエリーなどの装飾品のように気品の高い高級品としての外観を備えています。
ちなみにケンテックス トウールビヨンにもこのプラチナPVDを採用しています。


ここまでの三つがこのモデルの特徴的な点と言えるでしょう。


この三つの性能は今回発売になるNE88クロノグラフと9015の三針タイプの両モデルとも採用しています。


そのほかにこれまでケンテックスが蓄積した技術やデザインの結晶と新しいアイデアが随所に入っています。

・カーボンなどの複合素材にこだわった立体ダイアル(文字板)
・日本人彫り師による雉(きじ)のエングレーブをNE88に採用(Engraving)
・軟鉄をあえて見せる工夫をしたバックプレート(9015)
サファイアクリスタル(トップとバック)
・お客様の名前とシリアルナンバーを入れるエキストラバック


その他にもお伝えしたいポイントがたくさんあります。
これらは次回以降に詳細をお知らせします。

クラフツマン25周年モデルーその1

さていよいよ新クラフツマン25周年モデルの紹介に入りたいと思います。
新たに開発するクラフツマンは当初のS526Mそしてサイズの大きくなったS526Xに続いて第三世代といえます。

サイズは第二世代と同じ、ケースベルトのベースデザインもほぼ同じですのでモデル№はS526Xを踏襲します。
時計ファンにとって気になる搭載ムーブメントは二つあります。

一つは国産機械式クロノグラフNE88、もう一つは同じく国産の9015です。
いづれも日本が誇る精密技術から生まれた高性能ハイビートムーブメントです。

新生ケンテックスは日本人開発者として日本のものづくりにこだわり、スイスに勝るとも劣らないメイドインジャパンをめざします。

ここではまずNE88搭載の25周年モデルを紹介していきます。

先に記しましたがKENTEX社創立25周年にあたる節目としてこれまで蓄積した技術ノウハウとデザイン力を総結集したモデルを開発するという強い思いで始まりました。

そのためムーブメントにも当然こだわります。
以前から期待していた国産の高性能機械式クロノが今年(2014年)からリークされ幸いこの25周年モデルに搭載可能となりました。


SEIKOでは8Rと呼ばれるキャリバーですが性能的には7750にも負けていないハイスペック高級クロノムーブメントです。

28800vivration(4Hz)のハイビートはもちろん、クロノグラフ作動機構は7750のカム方式(Cam System)に対して多くの高級ブランドが採用しているコラムホイール(ピラーホイール)方式(Column Wheel System)を採用しています。
ここはスタート、ストップを司る重要な部分で、ボタンを押すとレバーが動作し作動機構を動かし、伝達機構へとつながる各種レバーを動作させる機構です。
コラムホイール方式はカム方式に比べて動作がスムースで他部品への無理な力を防ぐことでムーブの耐久性、長寿命化が考慮された設計となっています。
ただし製作には高い精密技術が必要で難易度が高く高価となるため高級機種となりハイエンドブランドに採用される機構と言われています。

また作動機構からクロノ秒針などへの時計の輪列機構へつなぐ/切断する役目の動力伝達機構(Power Transmission)には7750のスウィングピ二オン(Swinging Pinion)に対して垂直クラッチ方式(Vertival Clutch)が採用されています。
動力の伝達が歯車で行わないために原理的に針飛び、摩擦によるエネルギー損失、部品磨耗が発生せず作動も円滑であるといわれます。
時間精度と耐久性に優れた高性能な精密機構です。
ロレックスがデイトナをモデルチェンジした2000年にこの機構を自社キャリバーに採用したと書かれている記事があります。


その他にも持続時間は45時間、石数は34石となっており、7750のそれぞれ42時間、25石と比較しても優位なスペックとなっています。
また三本のクロノ針を一瞬にして帰零させるゼロリセット機構は三叉ハンマーと呼ばれる独自の設計です。
また自動巻きの巻き上げ効率を高めるための工夫のされたマジックレバーと呼ばれる機構が採用されています。

ローターには華麗なコートドジュネーブ仕上げが施されています。
すでにセイコーブランドで使われている高性能クロノムーブとして市場でも高い評価を得ています。

外装はケース、バンドに軽くて強靭な材料であるチタンをベースにブラックのセラミックリングを加飾的に使います。
チタンはステンレスの約8に対して約3.5の比重で時計サイズの迫力からは想像出来ないほど腕につけても軽く実際の携帯でも軽快で使いやすくまたアレルギー反応もない為に極めて実用性の高い金属です。
しかし一方で硬度が低く傷がつきやすい欠点があるためチタン表面にプラチナのPVDめっきを施すことで耐摩耗性を向上しながら高級感のある明るく美しい色となっています。
傷がつきにくくいつまでも美しい外観を維持できる実用時計としての耐久性を確保しています。

ベゼルの一部には高級素材のオクタゴン八角形)セラミックを採用、明るいプラチナ色に黒のセラミックがアクセントとなりデザインポイントとなっています。
セラミックはご存知のように非常に硬質ですから当然傷もつかずサファイアクリスタルとあわせて長く美しさを保つ事が出来ます。
愛用する時計が永く傷がつかずにきれいなままで使えることは時計ファンにとってはとてもありがたいことです。

この25周年モデルにはケンテックスのこだわりがたくさん凝縮されています。
ここではすべての特徴を述べると書ききれないので今回はここまでにします。

クラフツマンのDNAとして前作から引き継ぐスペックとしてはこのほかに
トリチウム発光(Tritium Ilumination System)のダイアルと針、軟鉄インナー構造の本格耐磁性能(Anti Magnetic construction)、樽型のラバー緩衝材を使った強化耐衝撃構造(Anti Shock Construction)などがあります。

何といっても25周年モデルですのでケンテックスのこだわりをとことん、隅々まで取り入れています。


次回はさらに詳細を少しづつ述べていきたいと思います。

KENTEX25周年モデルの開発

今年はケンテックス社設立25年になります。
この節目の年にこれまでの永年の時計造りで培ってきた技術とデザインを結集させたパーフェクトな最高の時計を造りたいという思いが昨年からありました。

いわばこれまでの集大成モデルということになりますが、その思いで今年初めから新モデルの開発に取り組んでいます。


ケンテックスブランドを日本で発売スタートしたのは1998年です。
初期の頃から比べるとデザインも変化し、こだわりも次第にエスカレートしてきました。

本物を造りたい。

そんな思いでこれまで永年時計造りをして来ました。
時とともにデザインもこなれ、難しい技術要素も取り込んできたせいもあって近年ではようやく本格的な時計に近づいてきたと自負できるようになりました。


25周年モデルの話しに入る前にこれまで造って来たたくさんのKentexモデルのなかで思い出深いものをここで振り返ってみたいと思います。

1997年にイタリア、ベニスにあるジュエリー時計ショップからKentexブランドでの時計造りを委託されたのがそもそものブランドの始まりでした。
それは記念すべきETA2824を搭載したS122Mモデルですが、これが後のCONFIDENCEへとつながります。

1999年にSKYMAN(S143M)とESPY(S153M)を発売し、2000年にLANDMAN(S265M)、2001年にMARINEMANを発売しこの時点で陸、海、空が出揃いました。

そして2000年に先ほど触れたETA2824を搭載したモデルをCONFIDENCEで発売、この頃からケンテックスの感性に響いてくれるファンが少しづつ増えてきました。
このシリーズは時計ファンに強く支持され年一回の限定シリーズが人気を得て2004年まで続けました。
ケンテックスファンならおそらくコンフィデンスを一つはお持ちの方が多いかと思います。
ベーシックな時計ですが飽きの来ない、いつまでも愛着の持てる時計です。
この頃からケンテックスのコンセプトと方向性が徐々に固まってきたように思います。

そしてその後さらに上位の時計造りを目指すようになります。

2002年に初めてバルジュー7750を搭載したモデルとしてLANDMAN2(S294X)を発売、この頃からクオーツと並行して製作したメカモデルをPROと称してETAムーブを中心にレベルの高い時計をめざし,高品質で適正な価格をブランドの目標としました。

2003年には同じくバルジュー7750を搭載したSKYMAN2パイロット(S368X)とESPY2(S349X)を発売しています。

ESPYはCONFIDENCEを上回る品質をめざし、東洋的感覚を取り入れたクラシックスポーツをコンセプトに創られたサブブランドです。

このときに三針タイプのESPY2824モデルも同時に発売しましたがこの年はケンテックスのマスターピースといえる時計が同時に2デザイン生まれた年でした。
極めて数の少ない限定生産ですが今でも私の中ではフラッグシップモデルとして自分でも満足の持てる時計です。

ものづくりというのは製作者の気持ちが表れるものだと思うのですがこのモデルは自分が開発に集中し、思いを込めた結果いいものが出来たという感覚があります。

2004年には初めて軟鉄インナーケースを採用した本格耐磁時計をLANDMAN(S409X-2824搭載)で造りました。
これは軟鉄のインナーケースを内蔵した構造で耐磁性能はJISで規定している「耐磁性能を持つ時計2種規格(直流磁界1600A/m)」をはるかに越える性能です。
この技術ノウハウが後のクラフツマンへとつながります。

今の時代においてはパソコンや携帯など磁場を発生する機器が増え機械式時計というデリケートな精密機械の世界においては高性能なムーブを磁場から守る機能がより意味のあるものになってきています。

そして2005年に日本ブランドとして初めてトゥールビヨン(E410M)を製作しました。75万円での発売でしたが当時スイスのトゥールビヨンは1000万クラス、安いものでも400万円はしていましたから時計業界での大きな話題となりました。

日本の時計業界にケンテックスの名が知られてきた一つにこのトウールビヨンがあります。
その後トゥールビヨンは2006年に第二弾(E436M)、2007年に第三弾(E472M)、2011年第四弾(E540M))と続いています。
E540Mはケース胴横に職人による手彫りのプレート(ゴールド色)をつけたものでクラシックながらとてもラグジュアリー感のある作品に仕上がっています。

そして2006年から開発をスタートし2007年に発売開始したクラフツマン(S526M-01)はKentexのそれまで積み上げた時計造りの成果が凝縮されたモデルと言ってよいでしょう。
ちょうどケンテックスブランドスタート10周年にあたる年でした。

それまでの陸海空のカテゴリーから離れ大人のスポーツウォッチとしてケンテックスの顔となる本格プレステージウォッチを目指したものです

ケンテックスの歴史に残る代表作にする。
その思いで開発したのがクラフツマンでした。

スポーツ感とともに時計としての機能、デザインの美しさを融合させ、そのうえに時計本来の実用性を徹底的に求めた時計、いわば時計としてパーフェクトな超実用時計をめざしました。

この時計の詳細については次回に伝えたいと思いますがその究極の性能として求めたスペックは超耐磁性能、耐衝撃性能、真っ暗な中でも時間の分かるトリチウム発光システム、そして実際の使用で携帯感が抜群のチタニウムケース、バンドの採用でした。

たくさんのスケッチを描き、あれこれと迷いましたが最終的には永遠に飽きの来ないデザインを求めてシンプルなデザインにまとめました。
ケンテックスの一つの理念である「流行に左右されない一生もの」をめざしたのです。
外見は一見地味、中味はスーパーマンであることを目標としました。

初代S526Mはわずか100本の限定品でしたがわずかな期間で完売となってしまいました。

“時計ファンは良く時計を知っている!”

これが造り手である私の感想でした。

これだけの時計はそう簡単には世の中に出てこないことは私自身が一番良く分かっています。
どれだけ造るのに手間がかかり難しいか、そしてあまり商売にならないぐらいにコストも相当高くつきます。
正直言ってメーカー泣かせな時計です。


そんな時計がスイスのブランドに比べたら比べ物にならないほどの安い価格で登場したのですから時計好きにとっては当然魅力ある時計です。
分かる人にしか分からない時計ですが、実はとてもすごい時計です。

その後クラフツマンはシリーズ化し径大化したS526Xシリーズへと発展します。
私はこのS526Xクラフツマン(2824)をいつも愛用していますがいったんこの時計を使い出すとほかの時計をしなくなるのが自分でも不思議な感覚です。
あえて理屈をつければ、軽さと、使い勝手と、飽きの来ないデザインが多分そうさせているのだと思います。
超実用時計は名ばかりでは無いと身をもって確信しています。



さて、少し話が戻りますが2001年から防衛省(当時は防衛庁)の陸、海,空、各幕僚との協力により正式な陸海空エンブレムの入った自衛隊モデルを造り始めました。

スタンダードタイプ(S455M)から始まり迷彩、ブルーインパルスモデルなどご存知のようにこれまで数多くの自衛隊モデルを製作しています。

この日本を守る自衛隊員の方々、そのご家族、そして自衛隊ファンの方々を含めて多くの方に支持をいただき今ではたくさんの方がケンテックスの自衛隊時計をお持ちです。
Kentexといえば自衛隊時計の代名詞のようになっています。

2010年にはブルーインパルス50周年記念時計としてバルジュー7750を搭載したスペシャルモデルを限定版で50個製作発売しましたが50万円(税抜き)という価格にもかかわらず1ヶ月以内に完売してしまう状況でした。

この企画推進も担当者の熱意とものづくりの思いがこの時計の完成度に表われ細かいところまでこだわりの詰まったとても魅力の高い時計に仕上がっています。
プレミア狙いで買った方もいるのにはびっくりしましたが事実その後の価値は上がっているようです。
その後も陸、海、空それぞれに新モデルが開発されていますが最近ではJ-solarとうたった光を動力源としたソーラー時計(クオーツ)を発売しとても好評です。



さてここまで長々と過去のケンテックスモデルを振り返ってきました。
私自身の時計造りの人生を振り返ったような思いになります。

KENTEXブランドをスタートして16年そして会社設立後25年の今、一つの区切りとしてこれまでの技術を総結集した記念碑的本格モデルの開発を決め、今まさに進行中です。

そのモデルはやはりこれまでのシリーズでもっともケンテックスらしさが出ているCRAFTSMANです。

ブランド10周年で登場したこのモデルをさらにブラッシュアップしブランドの顔となるさらに上位の本格時計をめざしているのが次世代クラフツマンです。

次回からこの新クラフツマンのモデルを紹介していきます。


2014年8月3日
橋本憲治

2014 新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。





今年の干支は午年です。
ものごとが「うま」くいく「幸運が駆け込んでくる」など、縁起の良い動物といわれています。

昨年はアベノミクスの影響もあってか日本の経済が久しぶりに大きく動いた年でした。
一昨年末に始まった円安の進行で輸出大企業の利益が大幅に改善され、また日本株の上昇で日本全体の景気が上向き始めているようです。
この勢いが2014年も続き日本全体が本格的な景気回復に向かうことを念じています。


さてケンテックスを振りかえってみると昨年はこれまでのケンテックスモデルのラインを充実させる年でした。
S683Mスカイマン(チタン)をリファインしたオールブルーバージョンのブルーインパルスモデル発売で始まり多くのファンに歓迎されました。
そしてランドマンシリーズのラージ版S678Xを新規投入、さらにS688XスカイマンとS683Mのリファレンス追加、年末にはE546Mエスパイアクティブの新色追加を行いケンテックスの日本製メカシリーズのラインアップが充実しました。

またJSDF自衛隊シリーズでは初となるソーラー充電機能を持ったS715Mで陸、海、空、各モデルを年末に発売スタートしました。
このモデルは現在多くの方に好評をいただいております。


また昨年はケンテックスの将来を見据えたリブランディングを進めた年でもありました。

1998年からスタートしたKENTEXブランドも15年が経ちました。

これからの進むべき方向性を決めるべく社内での議論はもちろん、社外のブランディング専門会社とのタッグを組んで一からブランドの見直しを進め、多くの議論をし、時間を掛けてようやく新しいコンセプトやロゴなども決めています。

この新しいコンセプトで新生ケンテックスとして製品に反映されるのはもっと先になりますが、これからのケンテックスはもっと上を目指し、より完成度の高い時計造りをめざしていきます。
今後はモデルの数を絞りながら、より本格的な時計へとターゲットを絞り込んでいくことになると思います。


ケンテックスは創業以来、時計外装の技術とデザイン力を培ってきました。
私たちは妥協を許さず、ディテールにこだわり抜き、機能と美を融合させた価値ある時計を造ることにこれからのケンテックスブランドとしてのコンセプトを見い出しました。

持つ人に本物の感動を与えたい。
時を経て永く愛される時計を造りたい。

その時計が親から子へ世代を超えて受け継がれていくことが私たちの夢です。

Time Crafted to Perfection.
時を造り、価値を創る。

ケンテックスは最高の時計造りをめざし皆様に喜びと感動をお届けします。


これからのケンテックスの時計造りにご注目ください。


最後になりましたが今年一年が皆様にとっていい年になりますように。
皆様のご繁栄とご健康をお祈りいたします。

ケンテックス代表
橋本憲治

アジア初 高級時計展Watches&Wonders.

9月25日から28日までアジア初の高級時計展が香港コンベンション&エキジビションで開催されました。














招待状がないと入場できないフェアですが最終日にもかかわらず多くの時計ファンが訪れていました。
まさにスイスバーゼルフェアをそのまま持ってきたような雰囲気で圧倒的なラグジュアリー感のある高級時計展でした。
バーゼルフェアのような一般入場者には中に入りにくいようなブースではなくすべてのモデルがオープンでじっくりと近くで見られる構成になっていて各ブランドの興味あるたくさんの時計を堪能してきました。

ここで出展ブランドを紹介すると以下の通りです。
日本語発音では誤記が出そうなのでそのまま英語で記しますと

Roger Dubuis   Richard Mille.    Vacheron Constantin.
Piaget.    Jaeger LeCoultre.   Panerai.     Cartier.
IWC.      Audemars Piguet.     A.Lange&Sohne
Van Cleef&Arpels.   Baume&Mercier.  Montblanc.
のそうそうたる13ブランドです。

各ブランドブースの中には実際に店頭でセールスを担当していると思われる専門の説明者が担当ショーケースごとにいて各モデルの説明をきちんとしていました。
またブランドブースとは別にCraftsmen AreaというコーナーがありそこではEngrave(彫り)やWatchmakerの実演をしており各メーカーのWorkshopの風景が見られるような工夫がされていました。

展示の中で特に興味のあったモデルを二つここで紹介します。

一つはリシャールミルブースにあったRM56-01のサファイアケースです。
























ケースとムーブの地板もサファイアになっており2012年製作モデルで限定5個の逸品を真近で見ることが出来ました。
サファイアのケース製作に1000時間以上かかったと説明にあります。
さすがにその場で価格を聞きませんでしたがあとでネットで調べてみるとなんと1億6000万円です!
リーシャールミルという人は凄い時計を造る人ですが値段もとんでもない価格をつける人だなとあらためて感じました。
まさに手作り感と希少価値のある時計ですが一体誰がこの時計を買うのか興味があります。





次はIWCのインジュニアカーボンです。














ブラックラバーベルトつきの自動巻きで裏スケルトンです。
外側にカーボンパターンが出ているのでいわゆるForged Carbon(一体成型)
では無いと思うのですが 説明してくれた人によるとケース内部もソリッドカーボンということで外側にうまくカーボンシートをフォーミングしているのかと推察します。その技術はかなりなものです。
腕につけさせてもらいましたがかなり大きく存在感がありました。
個人的にはダイアルはむしろカーボンでないほうがアクセントがあっていいかなと感じました。


13の高級ブランド一堂に集まって開かれたアジア初の高級時計展が香港で開催されたことはやはり香港が中国初め東南アジアのマーケットの橋頭堡として
位置づけられているからでしょう。
香港には世界で有名な時計ブランドのブティックが数多くあり中国人初め世界の観光客が日々時計を買ってくれる一大マーケットです。
香港市内には数多くの高級時計をおくショップがあり時計ファンにとっては日頃から有名な時計を真近にみるチャンスがあります。
また日本では高級時計をしている人は比較的少ないですが香港の人は時計好きが多くロレックス、IWC,パネライはじめかなりの人がブランドウォッチを腕にしているのを良く見かけます。
時計に関しては意外に成熟しているマーケットです。

アジア初のこの企画が成功裏に終わったように見受けられるので来年もおそらくこのW&W展が開かれることでしょう。
来年また機会が来ることを楽しみにしています。

バーゼルでの日本人独立時計師

2013バーゼルワールドでは二人の日本人独立時計師の方にお会いしました。
一人は菊野昌宏さんともうひと方は浅岡肇さんです。

ホール2の一階にAHCI独立時計師アカデミー会員)のコーナーがありますがその中に日本人としてお二人が出品されていました。
AHCIは企業に属せずに独立して時計製作活動をしている人の集まりで34名いるそうですがその中で日本人は現在2名です。
お二人について紹介します。

菊野さんは1983年生のまだ若い方ですがヒコみづので講師をしながら2011年に不定時法腕時計(和時計)製作がフィリップデュフォーさんに認められ準会員となり2013年に正会員となりました。
日本人初の独立時計師というのは非常に意義のあることだと思います。

和時計とは昼と夜を二分しそれぞれを6等分したものを一刻(いっとき)とする昔の時刻です。

その後永久カレンダー、トウールビヨンを製作し、今回のバーゼルではORIZURUというアワーリピーターとオートマタの複雑時計プロトタイプを発表していました。

実際に手にとって見せてもらいましたがすべて手作業で完成していて量産品にはない手作り感が強く感じられました。
金無垢でできた鶴(折鶴)の羽が動く造りになっています。
年にひとつのペースで新モデルを開発しているようですが次の製品は何を手がけるのか楽しみです。




浅岡肇さんは2013年に準会員となられて今回が初めてのバーゼル出品です。
もともと芸大出身のプロダクトデザイナーだったのが時計の密な世界にはまりCNCや工作機械を駆使して自ら時計を製作したのがいきなりトウールビヨンというすごい人です。

ムーブメントはもちろんケース、文字板、針などすべてを自作しているそうです。

このフェアではトウールビヨンを出品しています。
42ミリのSSケースですがこれも手にとって見せてくれましたが実にきれいな仕上げだったのが印象的でした。
文字板のデザインも独創性と美が伝わってきます。
高い精度と高仕上げのムーブ部品製作によってかなり高精度のトゥールビヨンになっています。

価格は680万円で銀座和光で展示し受注生産をするようです。

幼少の頃から工作好きで大工になりたかったとか。
浅岡さんが載った雑誌にこんなくだりが書いてありました。

プロダクトデザイナーとして作りたかったのは車とカメラと機械式時計の三つ。
車はメーカーに入社しなければ造るのは無理、カメラは精密機械から電気屋さんの対象になってきたので興味が薄れ、残ったのが時計。
すべて独学で時計製造技術を学びオフィスには必要な工作機械を揃えています。

時計の魅力について浅岡さんによれば、
『ひとつはその密度、小さなケースにあれだけの部品が詰まっている。
それと仕上げ、工業製品の中でここまで入念な仕上げを行う製品は他に無い。
常軌を逸した業界だがその凄みに魅力を感じる』
ということですがその言葉に私もまったく同感です。

浅岡さんはその製作過程を惜しげもなくブログで公開していますので興味のある方はご覧になってください。






写真左から菊野氏、私、浅岡氏、そして当社のNaoki

高級時計の世界ではスイスのブランドばかりが目立っていますが日本人時計師が世界に出て行くことは大いに歓迎すべきことです。

日本には大手の時計メーカーがありますがそれらは量産を主とした大衆時計が中心のため残念ながら世界のマーケットのなかでは高級時計としてのブランドの位置づけにはなっていません。
日本の時計というとどうしても高級品にはならないのがこれまでの流れです。

こうした大手企業に属さない日本人独立時計師が出てきて日本から世界に発信していくことで世界の高級時計市場で日本の時計づくりが評価され底上げされていくことが期待できます。
若い人たちがあとに続き日本人の手による手作りの高級時計を世界に発信して欲しいと思います。